粛々とした生活

2020年4月にエンジニアに転職しました。日々の勉強したことのアウトプットや雑記などを書きます。更新頻度は超低いです。

コンビニ人間〈読書〉

久々に本を読んだ。

二年くらい前までは割と小説を読んでた方だったのだがめっきり本とは無縁の生活を送ってきた。とりあえず家の中に積ん読してる本が山ほどあるのでそれを消化していこう。

 

「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて…。現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。

【「BOOK」データベースより】

村田沙耶香さんの「コンビニ人間

作者自身もコンビニアルバイトで36歳で、自身をモデルに書いた作品らしい。

物語を読んだり観る際、主人公の考えに共感できる作品と全く共感できない作品がある。

正直、この主人公の考え方や生き方には余り共感できないし、ともすればイライラした笑。

主人公の古倉は幼少の頃から世間一般の人間とはずれた子供で、たびたび突拍子も無い行動を起こしてはよく親や周囲の人間を困らせていた。普通の感覚や世間の目というのに鈍感で掴めない古倉は大学に入りやがてコンビニ店員としてアルバイトを始める。

バイトのマニュアルをしっかり守り、店員になりきる事で始めて世間の一員になれたと思えた古倉はそれ以来、就職もせずにずっと同じコンビニで18年アルバイトをし続けるのだ。

こういう人は割と一定数存在していると僕は感じていて、コンビニのバイトじゃなくて、一般企業の正社員でも古倉のような人間は結構いるんじゃないかと僕は思う。

前職は自動車製造のライン工だったのですが、毎日同じ作業を繰り返すだけで簡単な仕事だった。正直、正社員だろうが派遣だろうが能力に差はほとんど無く、というか寧ろ何10年と同じ仕事をやってる奴より派遣で新しく入ってきた人間の方が正社員より早く捌けるみたいなことも多々あったり…。

一般企業の正社員、という肩書きは持ってるのでもしかしたら古倉よりかは世間的には認められるのかもしれないが、仕事は誰でもできるのでこの会社が潰れたら貴方の事雇ってくれる会社どこにあるの?っていう人間が結構(僕も含めて)いた。(だから若い内に退職したのです。)

社会に出て四年経ったのですが、この世で一番重要なのは「思考力」だと最近思い始めてる。

この主人公も思考力がない人間だと思ってて、この仕事をマニュアル通りこなしてれば安泰だ、とか組織に身を置いて忠実に自分の仕事をやってればいいや、みたいな思考力の無い人が多いような気がする。特に終身雇用と年功序列でガチガチに守られてきた世代には。

そういった誰でもやれる仕事について何も考えてない人達が今後仕事をAIに奪われていく…正に古倉みたいな人から切られていくのではないだろうか…と思った。

主人公は終盤コンビニを辞めて就職しようとするものの、結局最後にはコンビニのアルバイト店員として生きていく選択をして物語は終わるのですが、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかと言われたらバッドエンドだと思う。

劇中、登場人物に白羽という社会不適合者の男が放つセリフがあるのですがこれが割と刺さった。

「普通の人間ってのはね、普通じゃない人間を裁判するのが趣味なんですよ。」

世の真理を突いたセリフだなぁーと深く感心した。だから僕たちは裁判されないように就職して、恋愛して、きちんと人の眼を観てコミュニケーションを取らなければならないんだ。

奇異な目で見られないように努力しなければならいんだ。って思った。

主人公はそういう意味ではこれからもずっと裁判をされ続けてさらに年をとるにつれて笑われていくんだろう…ってのを考えたらラストは割とハッピーエンド風に書かれてたけどどうもそうは思えないんだよなぁ…。

世界は色んな仕事でできているし、職業差別をしてる訳では一切無い。只、ちゃんと考えてる?っていう人が身近にも、前職の大人たちにも多く存在していた。

僕は古倉みたいにはなりたくない。

でも、常識にガチガチに縛られまくったつまらない普通の大人にもなりたくはない。

コンビニ人間は主人公や周りの常人の性格も割と極端に書かれてると思うので、現実はもっとグラデーションがあると思うけどね笑

とても面白くて良い作品だった。でも主人公の最後の選択には同意できなかった。

これから働き方や生き方も多種多様になってくると思いますが、こういう生き方もあるよね?って提示してくれるような作品でした。